岡山県の地形と昆虫の分布

●岡山県の地形と昆虫の分布

岡山県では従来から昆虫の分布を北部山地、吉備高原、南部平野の3つに分けて説明してきました(海に特有な昆虫は南部平野に含めて考えます)。

岡山県の北部山地は鳥取県境付近に東西に連なっています。最高標高は県の東部に位置している後山(1345m)です。岡山県では標高7-800m以上ではブナを中心とする冷温帯の植物の分布地域ですが、現在、ブナの原生林と呼べる森は極僅かになっています。毛無山や若杉峠付近等、昆虫採集の規制が行われているところもあり、昆虫採集に適したブナ林は多くはありません。北部山地で採集できる昆虫は草原性の種類をのぞいて岡山県に特有ということは少なく、中国山地あるいは近畿地方から中部地方につながるブナ帯に分布する昆虫類と共通する種類がほとんどと考えてよいように思います。

県中部には吉備高原と呼ばれる標高約300m700mの準平原が連なっています。この吉備高原の準平原部分はほとんどが開発によって宅地や農地になっています。しかし、高梁市備中町の金平国有林に代表されるように河川から準平原に至る斜面に残された自然林には岡山県に特有な多様な昆虫相の生き残りをみる事ができますし、石灰岩分布地域の特殊な植物相と相まって、ベニモンカラスシジミのような特有の昆虫相をみる事もできます。また、石灰岩地帯に発達する洞窟内部からは、特有なゴミムシやチビシデムシが発見されています。

吉備高原から南には平野が発達し、瀬戸内海につながっていますが、瀬戸内海よりにも昆虫の生息に適した森林を持つ低山が分布しています。

北部山地、吉備高原、南部平野に分けるとき、便宜的に北部山地と吉備高原の境はJR姫新線、吉備高原と南部平野の境は旧山陽道とされています。